土地に関する知識

【不動産のプロが解説】市街化調整区域を相続した場合の対処法:放棄と相続

2024/09/30

市街化調整区域は「新しい建物が建てられない」と前回のブログ で紹介しましたが、実際に相続した土地が市街化調整区域にあった場合は、どうしたらいいのでしょうか。

市街化調整区域のメリットやデメリットは?

最初に、市街化調整区域にはどんなメリットやデメリットが考えられるのかを把握しておきましょう。

【市街化調整区域のメリット】

<安く買える>
建築制限があるからこそ資産価値が低く、相場よりも安く購入できます。駐車場や福祉施設など、市街化調整区域を活用できる事業であれば、初期費用が少なく済むため有利です。

<税金額少ない
資産価値が少ないため、土地評価額が低くなり、比例して固定資産税も低くなります。さらに、市街地化調整区域は都市計画税がかからないため、その分も安く抑えられます。

<日当たりがよく、静か
周辺に大きな建物がないために日当たりがよく、大きな商業設備がなくて交通量も少ないために静かな環境を保てます。

【市街化調整区域のデメリット】

<新たな建物が建てられない
もともと市街化調整区域は農地の減少を防ぐために、原則として建物が建てられなくなっています。例外的に建てられるケースの場合や、現在ある建物をリノベーションする場合などでも、あらかじめ自治体の許可が必要となります。

<インフラが整備されていない場合がある
住宅地として考えられていないので、上下水道、電気、公共交通機関など、暮らしに欠かせないインフラが行き届いていないことも考えられます。

<利便性が悪い
最寄駅から遠い、病院や店舗が少なく生活が不便、できる商売が限られているなど、生活しにくい、商売しにくいといった場合もあります。

<資産価値が低い
市街化調整区域は市街地から離れており、さらに上記のようなデメリットがあるため、土地としての資産価値が低くなりやすい土地です。

<売却しずらい
売却したいと考えた時も、厳しい規制や不便さがあることから売却しにくい傾向があります。

相続放棄を考えるときは?

相続放棄はできますが、原則として相続を放棄してしまうと撤回することができません。相続を知ってから3ヶ月以内に「相続放棄申述書」を提出するので、それまでにしっかり考えてから判断しましょう。

【相続放棄を考える時のポイント】

■他の財産も放棄することになる
市街化調整区域だけを相続放棄することはできず、すべての財産を放棄することになります。他の資産との兼ね合いをみながら、検討しましょう。

■管理義務が発生するか
相続放棄をした場合も、その後にも管理義務が発生する場合があります。たとえ利用しない土地、相続放棄をする土地であっても、土地の管理について考えることは必要です。

■見直される可能性がないか理義務が発生するか
市街化区域と市街化調整区域はずっと変わらないものではなく、適宜見直しが行われます。将来的に市街化区域に編入される可能性があることも、考えておきましょう。

■事業によって開発された土地か発生するか
市街化調整区域でも、都市計画事業や土地区画整理事業などといった事業として開発された区域であれば、新たな建築の許可が不要です。該当するかは、自治体で調べられます。

■活用できるか
市街化調整区域の中にも、活用しやすい土地・活用しにくい土地があります。自分で判断するのが難しい時には、市街化調整区域の活用に詳しい不動産業者などに相談してみるのもいいでしょう。

売却することは可能か?

市街化調整区域は原則として新しい建物が建てられず、建てるとしても開発許可が必要なことから需要が少なくなり、結果的に売却しにくくなっています。しかし中には、比較的売りやすい土地もあるので、まずは不動産業者に相談してみることをおすすめします。
また、市街地調整区域の不動産は担保としての価値が低いため、住宅ローンの審査が厳しい傾向があります。それも売却しにくい理由の一つになっていることを、考慮しておきましょう。

売却しやすい市街化調整区域の例

・市街地調整区域に指定される前に建てられた建物がある
・開発許可を取って建てられた建物がある
・市街化地区域に隣接している
・開発許可が得られる可能性が高い

市街化調整区域を相続したら、どう活かせばいい?

土地や建物といった不動産は大切な財産です。手放すことを考える前に、どんな土地なのか、何ができる土地なのかを検討してみてください。

考えられる活用方法

■事業者に貸す、売る
広さがあって静かな環境を必要としている福祉施設、高齢者施設、医療施設の運営者に土地を貸す、または売却します。これらの施設は、条件を満たせば、特別に許可を得て建物を建築することができるので、市街化調整区域でも事業を行うことができるからです。

■太陽光発電を置く
自治体によっては規制している場合もあるので確認が必要です。

■資材置場にする
事業に必要な木材や鉄鋼などの資材を置く場所として活用します。建物が不要なので、初期投資が少なくてすみます。

■駐車場、コインパーキングにする
周辺に住宅地などがあれば、需要が見込めます。

■農地を貸す
農地の場合、観光農園や市民農園として業者に貸し出すことも可能です。

市街化調整区域にある土地や家は、市街化区域内にある場合よりも様々な条件があるために売却や活用は容易ではありません。加えて、都市計画法や自治体の条例などにも精通している必要があるために、より専門的な知識やノウハウが求められます。
専門業者に相談・依頼したい時には、市街化調整区域内の物件を取り扱った実績などを考慮し、慣れた不動産業者を選ぶようにしましょう。

本記事は、2024年9月時点の情報に基づいて作成しています。

この記事を書いた人
記事執筆者 日本興新株式会社代表取締役 星和